障害児支援制度のさまざまな課題

 この12月6日に新年度(2024年度)からの障害福祉サービス等報酬改定の方向性が決まり、あとは2月に示されることになっている報酬改定体系と報酬額を待つばかりになっています。報酬改定検討チームでは、他事業に比べ、障害児支援は論点も多く、2012年に障害児通所支援が児童福祉法に戻されて以来の大きな改定になりそうなことだけは確かかと思います。ただ、厚生労働省・こども家庭庁が公表している報酬改定の方向性では、検討チームやそれ以前の障害児通所支援の在り方検討会や障害児通所支援に関する検討会で、議論されてきて課題となった点を充分に反映できているかと言うと、中途半端になった印象はぬぐえません。
 例えば、放課後等デイサービスで、不登校の利用者を朝ないし昼前後から受け入れている実際に対して、学校との連携を行った場合に加算をつける、ということがうたわれていますが、果たしてそれが長時間受け入れた正当な評価になるのか、数字や算定基準も示されていないので何とも言えないもやもや感が残ります。また児童発達支援や放課後等デイサービスに、利用者のきょうだいなど定型発達の子どもを受け入れることもインクルーシブにつながるのでは、と言う議論もあったにも関わらず、報酬改定の方向性では、そういったことには一言も触れられていません。あくまで、保育所や学童保育所への移行という一方向のみのことが強調されているのにすぎません。もちろん、今児童発達支援や放課後等デイサービスを利用している子どもが、移行できるのならそれに越したことはありませんが、大人数のところがしんどいから障害児通所支援を利用していることも多々ある状況では、むしろ定型発達の子どもが、児童発達支援や放課後等デイサービスを利用するという姿があってもいいのではないでしょうか?それこそ、児童発達支援や放課後等デイサービスが地域に溶け込むことの早道でもあるようにも思えます。
 居宅訪問型児童発達支援についても、厚生労働省・こども家庭庁は、重症心身障害児のみを対象にしているわけではない、と抗弁していますが、対象児を重度(身体障害者手帳1級ないし2級、療育手帳A、精神障害者保健福祉手帳1級)としている現状では、不登校の子どもが必ずしもそこに該当しない場合がかなり想定されることからすると、やはり重症心身障害児を主に制度設計されたものと言わざるを得ません。対象児の見直しを図るのであれば不登校の子どもへのアウトリーチとして意義ある支援になるかもしれませんが。
 相談支援についても一言。報酬改定検討チームで何人ものアドバイザーが、機能強化型だけでなく、一人職場でやっている事業所でも採算が成り立つような単価引き上げを、と意見しているにもかかわらず、報酬改定の方向性ではその点についても無視しています。障害福祉全体の予算案が確定した今となっては、その中でどこを削り、どこを増やすかということになてしまいますが、本来の課題を見過ごすままにしていてはいけないと強く思うところです。

                                                               森