12年目に思うこと

 今日、8月6日は私たちの法人の設立記念日になります。この日を設立日としたのは、日本で皆既日食が見られた2009年7月22日(新月)からの初めての満月の日に当たるということ、そして言うまでもなく広島に原爆が投下された記念日(慰霊の日)であることから、平和を祈念したいということの2点からでした。そんなわけで、今日は法人にとって12年目のスタートの日になります。

 法人が設立する前から、「ちゃんぷる」は、別法人のもとで2008年に開所していますが、そのころ東住吉区内には、児童デイサービス(当時は、障害者自立支援法に基づく制度で、幼児・就学児ともひとくくりでそう呼ばれていました)はほかにはなく、近隣区でも平野区の「くれよん」や住吉区の「じらふ」など限られたところしかなく、一時、大阪市内でのデイは20~30カ所ぐらいしかない時代もあったかと思います。それが、2009年の報酬改定で児童デイの報酬が大幅に引き上げられ、さらに2012年に根拠づけられる法律が児童福祉法に変わって、児童発達支援(以下、児発)と放課後等デイサービス(以下、放デイ)に再編されてからは、一挙に激増する状況となり、今や大阪市内では、児発・放デイとも500か所を超えるぐらいまでの事業所数になっています。この激増ぶりは、それだけのニーズがあるということもありますが、コンサルタント会社などによる”放デイは、手軽に設置でき、社会貢献でき、かつ利益も確実に見込める”、というようなことを謳う起業セミナーなどに影響されたこともあるのかもしれません。
 そのような放デイも、少なくとも大阪市内では、すでに数年前からは、明らかに需給関係で言うと飽和状態になり、事業所によっては、子どもがなかなか集まらないという話もよく耳にするようになりました。そうなると今度は、コンサルタント会社は、放デイの生き残り策はこれだ!、というようなセミナーを打つようになってきました。例えば、運動療法特化型とか、もうこうなると福祉の観点から子どもの支援を考えるのか、経営の観点からデイを運営するのか、もちろん両立しないといけないのですが、どちらに比重がかかっているのか、私たち事業者はしっかり立ち止まって考えないといけないのではないかと思います。
 子ども自身が、数ある放デイ・児発を比較検討し、事業所を選べたらいいのですが、多くは保護者の判断によって選ばれることになりがちです。子どもの思いと保護者のそれが一致していれば、何も問題はないですが、もし子どもの思いと保護者の思い(あるいは願い)がずれていたら、子どもの思いとは別に、保護者の思いや願いが優先されて事業所が選ばれたら、それが子どもにとっていいのかどうかどうしても疑問が残ってしまいます。そんなこともわざわざ言わないといけない状況にまで現在は来てしまっていると思います。そう言いながら、厚生労働省は、他事業に比べて放デイの利益率が高い、かつ支出に占める人件費率が低いというデータ(どこまで正確な経営調査か疑問に思わなくもないですが)に基づいて、来年度(2021年度)の報酬改定に臨もうとしているように現時点では思えてしまいます。すでに関係団体ヒアリングに入っている「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」の報酬改定にかかる方向性やその議論の行方は要注目ですし、仮になけなしの声であったとしても報酬改定が改悪の方向に向かうのなら、言うべきことは言わないといけないと思っています。

                               森