「ドキュメント72時間」、そしてU2「約束の地」

 NHKで金曜日の夜に放送されている「ドキュメント72時間」、実は見始めたのは、浅草アンダーグラウンドの回からで、そもそもその存在をずっと知らずにいました。ですが、私は地球のいたるところでの日々の営みを描く放送や映画が好きで、「ドキュメント72時間」もそういう意味で、興味深く観る回が少なくありません。日本全国のある地点を選び、その場所(地)に行き交う人々のその場に来る(居る)目的や意味合い、思い、背景などが映され、その画面に登場する人一人一人の生活、ひいては少し大げさに言えば人生が浮かんでくることも少なからずあります。時には、私には思いも及ばない生活史の一端を知ることもあります。放送は、その地での72時間で写し取ったことをわずか30分にまとめられるので、テレビでは映らなかった人々のそれぞれの姿、人生もあるわけで、そういうことも含めて、私たちは、どれほどこの地球に生きている何十億の人々の生活・生のいくらかでも知っているのだろうと思います。そういうことも思いつつ、また「ドキュメント72時間」を視たいと思います。
 そして、この数日前、あるラジオ番組で、アナウンサー・久米宏さんの訃報に接し、18年半にわたる「ニュースステーション」の最後の数年のオープニングに使われたアイルランドのロックグループ・U2の「約束の地」をかけていました。私は『WAR』以来、ずっとU2を聴いていて、U2とエンヤ、ジョイス(「ダブリン市民」や「ユリシーズ」を書いた20世紀の作家)、ギネスビールが好きが高じて、アイルランドという国に魅かれ続けています。と、わき道にそれましたが、この「約束の地」の原題は、名前のない通りの場所で(Where The Streets Have No Name)、というものです。それは、北アイルランドの中心地・ベルファストでは、その町にある通りの名前一つで、その通りあたりに住む人々の人種、宗教、経済力などがわかってしまうというところで、まさしくベルファストは、カトリックとプロテスタントに分かれ、同じアイルランド人なのに宗教的にも政治的にも対立しあう状態が長く続き、それをu2は“”通りの名前のない場所で”多種多様な人々が集い共存するという願いを込めた歌を作ったという経緯があります。それをオープニング曲に選んだ「ニュースステーション」の制作の見識・センスを思い出しました。200年代初頭に比べて、ますます世界のあちこちで戦火が絶えず、混迷を深める現在だからこそ、もっと聞かれるべき歌なのだと思います。

                               森