障害福祉サービス等報酬改定検討チーム団体ヒアリング
来年度の障害福祉サービス等報酬改定に向けて、厚生労働省・こども家庭庁合同による障害福祉サービス等報酬改定検討チームで、先月から関係団体へのヒアリングが始まっています。今回のヒアリングは、今までになかったぐらいの50近くの団体にヒアリングを行うというかなり大がかりなものになっています。1回、2時間半の検討チームの会議に、8~9団体がヒアリングを受けるので、事前に報酬改定についての意見書が提出されているとはいえ、1団体当たり、説明とそれを受けての質疑応答が15分というスケジュール的にもかなりタイトなものになっています。ヒアリングを受ける団体には、日本医師会など、障害関係団体以外の団体にもヒアリングが行われ、それ自体は多様な意見を聞くというスタンスでもあり、いいこととは思います。
ヒアリング団体の多さ、そしてそれゆえに提出される意見書のボリュームからして、とても全部を読む余裕などはないのですが、それでもいくつかの注目すべき意見が提出されており、それらの意見がどこまで報酬改定に取り入れられるのかは不明ですが、より良い制度になっていくことを考え、また望むときに、心に留め置かなければと思います。
そのうちの一つが、全国手をつなぐ育成会連合会が述べている、厚生労働省が意見提出の着目点の一つに挙げている「持続可能な制度」ということに触れて、制度が始まって以来、3倍以上にも予算が膨らんでいる→このまま増えていけば制度を維持できなくなる、という明確には言わないものの厚生労働省が予算(支出)抑制のための案を出すよう求める、というスタンスに対して、むしろ必要であればちゃんと予算措置を設けるべき、という主張をされていて、思わず頷いてしまいました。厚生労働省の論の立て方では、あたかも障害福祉サービス関連費が伸び続けるのがダメであるかのように暗に言っているのですが、いや、むしろ制度が定着してきているから、自然と伸びてきたと評価すべきであって、そのためのお金が足りないと言うなら、障害福祉を国がちゃんと支えますよ、という枠組みを作るべきだというのが育成会の主張で、もっともな話です。マイナス改定をして、事業所が立ち行かなくなったり、従事する人が減ることになると、それはすなわち障害者の生活の質を落とすことにつながりかねません(現に地方を中心にそのような状況が起こっている、と育成会は主張しています)。もちろん、設置基準・人員基準や報酬体系・報酬単価で見直すべき点が全くないとは思いません。
次に、育成会も、また全国児童発達支援協議会からも出されていた意見が、居宅訪問型児童発達支援が、制度設計としては、主に外出が困難な重症心身障害児を対象に設けられた事業を、引きこもり・不登校の子どもにも使える制度に改めるよう求めるもので、ここに関しては、私はこの制度(事業)が設けられた5年前のパブリックコメントにこのような意見を出していたものであり、やっと全国団体もそのことを主張してくれるようになった、という個人的な思いがあります。通所できない子どもに対するアウトリーチ(こちらから出向く)の事業であり、もっと増加してほしい事業です。
さらに、これもいくつかの団体から出ていたものですが、インクルージョンを進める観点から、保育園・幼稚園と児童発達支援、また学童保育と放課後等デイサービスとの間で、相互で利用できるとか、同じ敷地内に両方の事業が併置するなどの意見も注目すべき点です。ただ、学童保育は、市町村によって設置形態や従事者の雇用形態などかなり差があり、制度変更・整備は、一筋縄ではいかないのではないかと見ています。
また、全国児童発達支援協議会は、障害児通所支援がもともと集団での療育を行うことをイメージして作られた制度であることから、個別療育の場合はもともとの10:2という人員基準や、その基準より多く人員配置を行う加配加算は適用しない、という注目すべき意見も提出しています。関係団体ヒアリングは、明日・8月3日も引き続き行われるので、団体ヒアリングを終えたうえで、厚生労働省・こども家庭庁が、どのような報酬改定原案を出してくるのか、今後の検討チームのたたき台と、それに基づく議論の行方に注目していかねばなりません。
森