谷川俊太郎さんのこと~「にほんご」など
現代日本を代表する詩人、谷川俊太郎さんが亡くなられた、というニュースを目にして、ついに、という思いが真っ先に浮かびました。大学生の頃によく読んでいた方が、順に亡くなられていき(例を挙げると、古くは、安部公房、井上ひさし、吉野弘、近年では、真木悠介・・・)、まだまだ萩尾望都さんや山中恒さんはご健在ですが、自分もそれだけの時間を過ごしてきたのだ、という感を強くします。『二十億光年の孤独』というシュールなタイトルに惹かれ、三好達治の序文が付いたその処女作をはじめとした当時の『谷川俊太郎全詩集』とかも買って、『六十二のソネット』など繰り返し読んだ詩集もありました。友人の多くが、『夜中に台所できみに話しかけたかった』を持っていたし、『定義』とかもよく読まれていたかと思います。
谷川さんの仕事としては、多くの詩作のほか、例えば「鉄腕アトム」の作詞だったり、ユング心理学者・河合隼雄さんとの対談『魂にメスはいらない』もよく知られているかと思いますが、今はあまり知られれないようになった著作に、『にほんご』という小学1年生向け私家版教科書ともいうべきものがあり、これは盟友の詩人・大岡信さんや画家・安野光雅さん、そして当時の福音館書店の社長だった松居直さんとの共編です。1979年に刊行されていますが、日本に在住している外国にルーツのある人々・子弟も意識して、「こくご」ではなく、「にほんご」と名付けた問題意識、樹の気持ちといった感受性、手話や点字も収載したり、今でいう多様性が表現化されていて、それが50年以上も前に子ども向けにも作られていた、ということに、その先進性を感じます。
ついでながら、谷川俊太郎さんの父は、谷川徹三さんと言う哲学者で、徹三さんの「世界連邦」の構想という本も読んだ記憶があります。その父のコスモポリタンの感性が、俊太郎さんにもいくらか継承されていたのかもしれません。 また、谷川さんの著作を読み直したいと思います。
森