見え方、捉え方の違い
今回もまた以前のちゃんぷる新聞「カフー」で取り上げた話に絡む話です。そのカフーで取り上げたのは、伊藤亜紗という人が書いた『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書・2015年)という本から、晴眼者が世界(身の回りの世界)をとらえる捉え方と目の見えない人が捉える捉え方の違いを引用して、空間把握や感覚の違い~耳で世界を眺めたり、足で地面をとらえる、ということに触れたことでした。 それは、単に晴眼者と視覚障害者との違いだけでなく、例えば自閉症の人はそうではない人と世界をとらえる感覚の違い、しいては認識の違いもあるだろうということを書きました。もちろん、そこに個人個人での感覚の違い、志向性の違い(どんなことに魅かれるか、どんなことに目が向くか 等々)も重なって、私たちが自分で感じていること、世界を見る見方は(共通している部分もあるけれでも)、一人一人で違っている、ということも書きました。そこに他人を知ることの難しさがあり、私たちはそのことに謙虚でなければならないと思います。
前置きが長くなりましたが、その伊藤亜紗さんの名前を意外なところで発見しました。ヨシタケシンスケさんという絵本作家に相談を受けたという絵本『みえるとか みえないとか』(アリス館・2018年)が、それです。
この絵本は、上に書いた晴眼者と視覚障害者の世界の捉え方の違いということを、こんな文章での回りくどい説明ではなく、絵で見事に表現しています。ある地点から目的地に向かう道順の覚え方・辿り方の違いが、一目で表現されています。またそれ以外にも ”みんなよりゆっくりなひとだけがかんじられるもの” ”きこえないひとだけがみわけられるもの” という風に、感じることや苦労やしたいことはその人にしかわからないことがあるということも書いて(描いて)います。文字では伝わりにくいことも絵ではこんなふうに表せるのだという素敵な絵に満ちた絵本です。一読をお勧めします。
蛇足の話をひとつ。私が、伊藤亜紗さんの『目の見えない人は世界をどう見ているのか』という本に出合ったのは京都の一乗寺にある恵文社という本屋さんです。
京都に住んでいた大学生のころから、ときどき訪れる本屋さんですが、独特の品ぞろえと雰囲気のある本屋さんで、どこかのセレクトで「世界で一番美しい本屋10」に日本から唯一選ばれた本屋さんでもあります。その恵文社が影響を受けた書店が、同じ京都の寺町二条にある三月書房だそうです。三月書房は今でもありますが、恵文社の店長だった人が独立した本屋さんができたりもし(誠光社)、ということに目を向けると文化というものはこうして形成されていくのだろうと思いました。
森