続/9月入学・新学年論について
先日、にわかにその導入に向けて検討が進められていくと報道されるようになった9月入学・新学年論について、もう少し考えてみます。先日、私がこのことについて書いた前後に日刊スポーツが、全国3000名に緊急アンケートをとったところ、9月入学・新学年への移行の是非について、反対という人が若干多かったようですが、世代別で見ると10代が一番反対が多く、年齢が上がるほど賛成が増えるという結果だったと報道されています。であるとすると、そもそも何人かの高校生たちが、実質新学年を迎えられない(学習だけでなく、友達に会えない、クラブ活動などもできない)現状から、来年の卒業を3月でなく8月に伸ばしてほしいという声から政治家も取り上げた議論というのも、単純に考え決める事柄ではないことがわかります。その後の報道では、文部科学省も今年からではなく、来年の9月からの導入に向けた検討に入ったということのようですから、拙速にこの9月からという懸念は、ひとまず回避されたとみていいのかと思います。
とは言え、もし、仮に来年またはこの数年のうちにも9月入学・新学年に移行するとして、初年度の新1年生は、17か月間の子どもを1学年とするのか、あるいは12か月間(4月2日生まれ~翌年4月1日生まれ)と5か月間(翌年4月2日生まれ~8月31日生まれ)の2集団(2学年)に分けるのか、という議論も考える必要があるでしょう。というのも、このことについてビートたけしが、テレビで言っていたことで気が付きましたが、子どものうちの1年の差というのは大きく、まして1歳半近くとなると、心身の発達の差は定型発達の子ども間でも相当の差が生じます。ここのところをどう考えるのか、これは学校の教職員の配置、学級編成に関わってきます。
ただ、こうした問題も、前回でも少し触れた教育評論家の尾木直樹さんが、かねてから主張しているように、学年主義を止めて、1年生や6年生が混じって学習するという形もあったり、一斉授業ではなく、個別やグループに分かれて学習するなどというように、教育・学習方法や枠組みを抜本的に変えるということになれば、想定される懸念はかなり軽減されるのかもしれません。しかしながら、今マスコミで俎上に上っている議論では、そういうことまで検討されているのかは不明です。
もう一つ、この議論以前の問題として、政府が、新型コロナウイルス感染症対策で、なぜ学校休校要請が他の対策(緊急事態宣言、休業要請)よりいち早く行われたのか、それは休業補償をする必要がないからだ、と元文部科学省事務次官の前川喜平さんは言っています。前川さんも言われるように、教育は子どもにとって権利であり、国にとっては子どもたちに教育を行う義務があるにもかかわらず、なぜ真っ先に行ったのか、本来は学校を休む(休校にする)というのは、対応策として最後にするべきだ、と主張されるのは至極理解できます。そんなこんなで、緊急事態宣言も1か月伸びることで、多くの自治体では5月末までの休校を決めていることから、ほぼ3か月も学校に子どもが行けない状態が続いてしまうことになってしまいます。9月入学・新学年論の前に、この状態をどうしたら解消できるのかにもっと知恵を絞り検討を重ね、対応策をとってほしいと切に思います。
森