経済活動にヘルパーは使えない、という決まりごと

 今夏の参議院議員選挙で、筋力が徐々に低下していくALSという難病患者である舩後さんとやはり重度の身体障害者である木村さんが、当選し、今日が初登院となったというニュースが流れています。国会内のハード面、つまり車いすごと議場内を行き来できるようにするということもニュース画像で流れていました。同時に、今回問題となったのは、今回当選した二人は、介助者がいないと院内活動もできない(舩後さんは音声言語で話すことも難しく、賛否を表明するボタンを押すのも介助が必要)ことから、今まで利用してきている重度訪問介護という制度で介助を受けれたらよかったのですが、重度訪問介護に限らず、現在の日本のヘルパー制度では経済活動には利用できない、という決まりごとがあります。国会議員も報酬を得る経済活動であるということから、それは雇用主(今回の場合は参議院)が介助を保障すべきだというのが、国(厚生労働省)が作ったルールです。ヘルパーを経済活動(平たく言えば就労)にまで認めたら、現在の財源ではとても足りなくなってしまうという事から、制度発足以来のルールを変えるつもりは毛頭ないというのが現状かと思います。(実際、この二人の当選により、議員活動に必要な介助者の費用は参議院が持つそうです。)
 ですが、障害を持った人が、日常生活を送るうえで当然必要とされる介助を経済活動は除くということになれば、雇用主は、本人のみならず介助者の雇用や、場合によってはハード面の整備などかなりの費用を見込んで受け入れしないといけないという覚悟と経営上の余裕がないと重度の人ほど雇用はままならないという現状はなかなか改善されないと思います。障害者の社会参加、という理念からすれば、現在の国の決めごとが不十分な制度と言わざるを得ません。
 現在の障害福祉制度(障害者総合支援法)が、制度設計としていかがなものかということはほかにもいっぱいあります。例えば、ヘルパーも居宅内と外とでは、居宅介護と移動支援や行動援護、同行援護などになぜ分かれるのか、中でも移動支援以外は国が義務的経費を持つ「障害福祉サービス」と位置づけられているのに、移動支援だけ市町村事業という扱いなのはなぜか? 居宅内と外に基本的には分けているのに、重度訪問介護などは、居宅内外一体となった制度(類型)になぜしているのか、複雑でわけのわからないことがあまりに多すぎます。
 ですが、制度が一旦スタートし、その制度で何年も運用されていると(今年で13年になります)、事業者も利用者も(特に事業者は)それにならされてしまい、なぜそんな仕組みなのか初めに抱いた疑問に目をつぶり、あるいはそんなことすら意識に上らなくなり、そういうものだという現状追認に流さてしまっているのではないか、と今回の出来事で気付かされてくれます。国から与えられた制度として受け止め、些末なことだけに目が行くということがないようにしたいと思います。

                                                         森