福祉がビジネスとしてまかり通る時代
共同通信社で、厚生労働省キャップとして、長年、障害福祉の取材にあたってきている市川亨さんという方が、『障害者福祉ビジネス』という本を出版されました(集英社新書)。福祉事業に従事する人がメシを食っていける事業として成り立つことは、当然必要なことで、ただでさえ働き手難にあえぐ昨今の状況で、このことに異を唱える者はほぼいないだろうと想像します。しかし、あくまでも利用者の暮らしを支える・思いを大事にするということが、まず求められることで、儲けを第一に優先するという手法や考えはいかがなものか、と常日頃から思ってきているところです。ところが、特にこの数年の状況は、もっともらしくきれいな言葉を並べて(例えば、「社会貢献で稼ぐ」「、事業者も利用者もwinwinになる」など)、堂々と福祉で儲けようという言説がまかり通ってしまっている、ということを市川さんは丹念な取材で明らかにしています。
グループホーム恵や絆ホールディングスの問題は、マスコミでも大きく取り上げられ、業務譲渡や報酬返還というようになっていますが、そこまでの行政処分を受けず、違法とまでは言えないけれど、福祉事業(あるいは医療事業)を行うものとしてのモラルの底が抜けてしまったような状況になっていることに、市川さんは嘆きと怒りをもって綴られています。利用者の意向も聞かず、訪問看護の頻度を増やしたり、状況やニーズに関わらず一律に30分の滞在にしていたり、といった対応をする業者。売り上げや利益率が高いことを謳って、開業を勧めるコンサルタントの暗躍。福祉に従事したこともなく、知識もない者でも事業を開設できてしまう現在の仕組みは、量を増やすことはできても、質を担保できるかはどうかは疑問と言えます。仮に、現場で働く者の視覚や経験のハードルを設けたとしても、事業主(経営者)が儲けることしか頭にないのだとしたら、利用者に寄り添ったいい支援が行われるとはなかなか考えづらいものです。
市川さんが出された本のサブタイトルは、「食いものにされる税金と利用者」とあり、一部の儲け第一主義の業者の跋扈によって、まじめに福祉事業を営んでいる者が割を食うことだけはあってはならないことなのですが。ただ、現在、国において進められている障害福祉報酬改定の検討が、どのように進んでいくのか予断を許さないと私には思われます。
森