生活環境が変わること(進学、転居など)が及ぼす影響
新型コロナウイルス感染症の感染拡大による生活形態の変容は、大人以上に子どもにとって、その状況への対応にかかっている心理的な負荷は、(個々人で程度の差はあったとしても)相当なものがあると想像されます。
卑近に自分のことを引き合いに出しますが、私は小学校3年生から4年生になるときに引っ越しを経験しています。生まれ育った町は、公団住宅(現在のUR)や府営住宅が立ち並ぶところで、小学校に通っている子どもの大半が、その団地の子どもというところで9歳の春まで過ごしてきました。ところが、隣町とは言え、団地など全くなく、田んぼや池が広がるそれまでと全く街並みを異にする町に引っ越したことで、私はかなりのカルチャーショックを受けました。なかなか同級生にもなじめず、中学生になるころには相当なひねくれものになっていました。もちろん、ひねくれものになったのは、家族関係やいろんな要素も絡まっているはずであり、すべてが転居ゆえのカルチャーショックというつもりは毛頭ありませんが、自分の中で育ってしまった周囲の環境へのなじみにくさは、違う町にある高校に通うようになるまで相当引きずってしまったように自分では感じています。
長々と自分のことを引き合いに出したのは、進学や転居などで生じる家族以外に日々出会う人々(子ども、大人)がガラッと変わってしまう、新しい人と出会い、関係を結んでいくことは、子どもにとって、時に大人が想像している以上にしんどい思いを抱えることもあるだろうということを知っておく必要があるのではないかと思うからです。
大人になれば、行動の自由度も大きく、また出会ってきている人が多くなり、世界にはいろんな形や風景、文化があることも知り、あるいは経験してきてもいるかもしれなく、それだけ対応力を身につけてもいるでしょう。けれども、子どもは、まだまだ経験値が少なく、それまで自分が出会ってきた人や街並とは違う所で毎日暮らしていかないといけないとなると、そこに順応するのに大人よりずっと労力を使うこともよくあることだと思えます。もちろん、これには個人差があって、あまり時間がかからず新しい環境や人々に慣れていく子どももたくさんいることだろうと思います。私自身のことで言えば、幼稚園から小学校に上がったときはさほど順応するのに時間がかかったようには記憶していません(転居はしていないということも大きかったとは思いますが)。なので、どの子どもが、ということではなく、どこでどのようなときに負荷がかかるかは一概には言えない、とこれも言ってみれば当たり前すぎることかもしれませんが、春という変化の時期、まして今のようなかつてなかった社会的な状況の変化があるときには、そのことが子どもの心に及ぼす影響がどれほどのことか、見逃さないように気をつけていきたいものです。
森