構造化された空間時間とそうでないとき

 もうしばらくしたら500カ所を超えるのではないかという大阪市内にある放課後等デイサービス(児童発達支援もそこまでではないにしても数的には充分な数の事業所が大阪市内ではあります)は、事業所ごとで、かなリ色合いも、またどんな子どもが来ているのかも違いがあるように感じてきています。その中でも大阪市が、特に専門療育機関として指定して、3歳児から小学校3年生まで(一部事業所は就学前まで)、自閉症スペクトラムと診断された子どもだけを対象として、1年間だけ月2回ペースで利用できる事業所がいくつかあります。そのいくつかを見学させてもらったことがあります。事業所ごとで、進め方や他児との関わり具合に多少の差を感じることはありましたが、それでも共通していることの方がかなり目立っていました。
 専門療育機関(事業所)に共通しているのは、何よりも子どもたちにとって、認識や行動を誘導してもらいやすい構造化が図られていることでした。構造化された、と言うと難しく聞こえますが、要は自閉症スペクトラムと診断された子どもたちにとって余分な情報(環境)を排除し、逆に認知認識や行動がしやすいような提示(絵カードや写真など)や環境が整えられた空間ということを言っています。興味の対象がうつろいやすければ集中するもの(集中すべきもの)だけを目につくところに置いた(用意された)工夫や、活動・行動の転換を促すタイマーの使用、活動・行動の流れがわかるスケジュールボードの活用、仕切られた空間などです。確かにこのような誘導やサポートがあれば、活動がしやすく、集中も転換もできやすいと思います。ですが、その一方で、これは限られた空間と限られた時間(1時間以下)だからこそできることなんだろう、という思いに駆られることを退けることはできません。
 皮肉めいたことを言いますと、これは療育やデイサービスと言うより、お勉強、認識しやすいあるいは整えられた行動が取れるように、その仕方を(保護者子どもともに)学ぶところと捉えた方がいいのではないかと思います。逆に言うと、家庭や身近なところでここまで整えられた空間(環境)が用意できるのだろうかという疑問が付きまといます。専門療育機関・事業所で学んだことも日常生活で活用されなければ(そうなることを専門の世界では般化と言いますが)、あまり意味がないように思えたりもします。学校や保育所幼稚園以外で子どもが自由に過ごす時間は、一日のうちで1時間ぐらいという子どもはどれぐらいいるでしょう。一方で、ひたすらゲームにふける子ども(大人も!)がいて、1時間という見事に短く切り取られた時間で課題に取り組んだり、遊んだとしても、残りの何倍もの自由な時間をどう過ごしていくのか、行動の切り替え・時間配分を自らのものとしていくのか、相当な隔たりを感じてしまうことの方が多いです。ということを踏まえると、もっと日常生活に活かせる関わり方や習得のされ方をどう編み出していくのかに傾注しなければと思うところです。

                             森