楽しく取り組めるということ

 今年の全国大学ラグビーは、天理大学が、初優勝。関西勢としても、故平尾誠二さんがキャプテンとして、大学としては、初めての三連覇を飾った同志社大学以来という歓喜に溢れた試合を私もテレビ観戦していました。テレビを視ていて、何よりも感じたのは、プレーをしている選手たちが、試合をとても楽しんでいる様子がにじみ出ていたということです。もちろん、試合開始間もない時間帯から得点し、終始試合を有利に進めていたことが大きいとは思います。ただ、そうは言っても、単に勝っているからというだけではないラグビーというチームスポーツを心から選手たちが楽しんでいるということが、ひしひしと伝わってくる姿を見ることができました。今年度、天理大学は、8月にラグビー部員に新型コロナウイルス感染者が出て、約1か月部活動が休止を余儀なくされたということがありました。中には、天理大学というだけで、ラグビー部員でない者でもアルバイトに入るのを断られたり、心が折れそうになるようなこともいくつもあった、と報道されています。9月頃には、果たして今シーズン、リーグ戦そしてその先にある全国大会も実施できるのかどうか不安視もされていたように思います。それが、選手たちにとっては、そのような経緯があっての結節点としてとして決勝の舞台に立てたこと、それをこの1年ともに切磋琢磨してきた仲間と一緒に試合をできる喜び、というものが垣間見えたように私には思えました。
 今年の天理大学のラグビーは、傑出した選手がいるとは言うものの、決して個の力だけで押し切ろうというのではなく、ボールを持つ選手の所に他の選手が素早くサポートに行く、あるいは相手の選手に絡みに行く、小さいパスをつなぐ、できるだけ並行なラインでパスを受ける、というような技術的にも習熟がいるし、また体力的にもきついラグビーをしていると思うのですが、リードしているとはいえ、相手の方がばてている、天理大学の選手は倒れてもすぐに起き上がるというプレーを続けていました。そんなきついラグビーのはずなのに、キャプテンを始めラグビーを楽しんでいる、というのが何より印象的でした。
 好きこそものの上手なれ、という言葉がありますが、うまくなるかどうかは別にしても、とにもかくにも目の前のことにある事柄に喜んで、あるいは楽しんで取り組めるかどうか、ということはとても大切なことであるように思います。嫌々ながら取り組む、仕方なく取り組む、ということで身につくこともあるのかもしれないのですが、どうせなら。この一日、そして大げさなことを言うと、この一回きりの人生、許されるのであれば(状況・環境など)、楽しんで目の前のことに臨みたい、取り組みたいものだと、テレビ観戦後、噛みしめるように思いました。
 これは、とりもなおさず、私たち自身がそうであり、また子どもたちにもそうであってほしいと願わずにはいられませんでした。

                                                                   森