放課後等デイサービスの行方

 つい最近、市を通して国(厚生労働省)が民間会社に委託して、全国の放課後等デイサービスに、その実態を把握するという趣旨のアンケート調査への協力を事業所に求められてきました。
 そのアンケートの内容は、一つは、これまで放課後等デイサービスの対象とはなっていない専修学校生を対象に含めるかどうかについての意見を聞く項目がありました。これは、全国のかなりの自治体から「専修学校生も放課後等デイサービスの対象に含めるべき」との声が寄せられ、2019年度中に対象に含めるかどうかの判断を得る、とされたことを受けての設問であることは明らかかと思います。
 それ以外では、行動障害の状態にある子どもや不登校の状態にある子どもをどれぐらい利用しているかなど利用している子どもがどんな状態にあるかを聞く項目もありました。それらは、2018年度に行われた報酬改定で新設された加算の意義の検証の意味合いもあるかと推定されます。ただ、その一方で、各事業所の支援内容をいくつかの切り口で聞く項目もあるのですが、これらの項目には違和感を覚えることがいくつもありました。
 例えば、日常生活動作(ADL)の自立の支援について、①個別活動のみを支援 ②個別活動と集団活動を組み合わせ提供 ③集団活動のみを提供 ④提供していないの四つの選択肢から一つ選択、となっていて、①や②を選択した場合にそのコマ数や1コマ当たりの時間を記入するように求められる設問があります。こんな聞かれ方をすると、答える側としては戸惑いを感じずにはおれません。セラピストが行う機能訓練であれば、個々は明確に答えることができるかもしれませんが、デイで過ごす中で自然と出くわす服や靴の着脱や食事の時、排泄の時に、何らかの働きかけや支援を行っていることは普通にある状況です。日常生活の流れの中で働きかけられる支援あるいは行為と言いかえてもいいのかもしれませんが、それは「提供していない」ということになるのでしょうか?限られた時間(或いは構造化された)時間や空間ではなく、日常的な流れ(時空間)での適切な支援や関わりの方が、より身につくのではないか、と私は思ってきています。なので、このような設問には戸惑いを感じずにはおれないのです。似たような項目建で、社会性やコミュニケーションスキルを問う項目もあります。
 このような問い(設問)を作っていること自体に、子どもの日常、現在置かれている状況にどれだけ沿った制度設計を考えているのか不安にすら思います。まして、昨年度から新設された強度行動障害児支援加算は、この加算を算定するにあたって該当する子どもかどうか判定する聞き取り項目に、自傷について「肉が見えたり、頭部が変形に至るような叩きをしたり、つめをはぐなど」が「一日中」であれば5点というような在宅生活を維持できるのかどうかも疑わせるような項目が平然と記載されています。こんな聞き取り項目(11項目で計20点以上で該当児童と判定)では、加算を作ったと言っても、この加算をほとんど有名無実にしようとしているのではないか、と疑いたくなります。強度行動障害の状態にある障害児・者がどんな在宅生活を送っているのか、そのためにどれぐらいのどういう支援が必要であると考えているのか、厚生労働省の姿勢を問いただしたくなります。(なぜならこんな聞き取り項目も作って施行しているのは厚生労働省ですから)
 こうしてみてくると、2012年に児童デイサービスから児童福祉法による放課後等デイサービスに変わって激増している放課後等デイサービスを、国は制度的にどういう方向に持っていこうとしているのか、課題を整理しきれずに中途半端な改変を繰り返しているように私には思えてなりません。例えば、強度行動障害の利用促進を進めるなら聞き取り項目や評価の再検討など本気度が見えないと、有識者の指摘を受けて加算も作りましたよ、というスタンドプレーにも見えてしまいます。
 次の報酬改定は、おそらく2021年度。来年の夏にも障害福祉サービス等報酬改定検討チームがまた立ち上がるのでしょうか。もし設置されたら、そのチームの素案や議論の行方をまた注視したいと思います。

                             森