改めて報酬改定について思うこと

 さまざまな混乱を伴いながらも今年度からの報酬改定により、放課後等デイサービスに通う子どもは、指標該当(大阪市では、なぜか区分該当と言い換えていますが)する子どもとそうでない子どもに分かれ、延べ利用者数のうちその指標該当にあたる子どもが50%以上を占める事業所が区分1とされ、50%未満の場合区分2とされるようになりました。わかりやすく言うと、例えば年間利用者数が延べ2000人いたとして、1000人以上が指標該当の子どもであれば区分1,1000人に満たなければ区分2というわけです。指標に該当するかどうかは、食事・排泄・入浴・移動の4項目のうち3項目以上で全介助であるか、または支援度がどれぐらい必要かを判定する聞き取り項目16項目(それぞれ0点~2点に点数化されている)で計13点以上である、ということになっています。つまりより支援が必要とされる子どもが多ければ区分1になり、報額も区分2に比べいくらか高いという決め方です。
 放課後等デイサービスで軽度の子どもしか受け入れない事業所が増えている、という話が盛んに流れ、3年に1回の報酬改定があるたびにそのことが俎上に上ってきたことを受けての改定がこれです。重度の子どもをしっかり受け入れてくださいよ、というメッセージは充分に理解できます。ただこの聞き取り項目の妥当性や聞き取られ方(運用)には疑問符がいくつも付きます。
 例えば、聞き取り項目10の「突発的な行動」は、ほぼ毎日あれば2点ですが、週1回以上(週4回以下)であれば1点、週1回未満であれば0点です。ということは、例え月2~3回突発的な行動があったとしても0点で、指標では数値上支援が低くていいという扱いです。しかし仮に頻度が低くても本人や他者の生命や体に危険を及ぼしかねない行動があったとすればこれが指標に反映されないのは何とも解せません。
 同様のことは、これも新たに設けられた児童発達支援・放課後等デイサービス用の強度行動障害加算チェック項目についても言えます。こちらは11項目でその状態や頻度によって、1点・3点・5点に分かれていて、計20点以上に該当すれば、加算強度行動障害にあたる子どもとされます。ガイドヘルプで移動支援とは別に行動援護という類型が設けられているものの通所版という意味合いかと思いますが、例えば項目1の「ひどく自分の体を叩いたり傷つけたりする等の行為」ですが、目安と例示として「肉が見えたり、頭部が変形に至るような叩きをしたり、爪をはぐなど。」とあり、これが週に1回以上で1点、1日に1回以上で3点、一日中で5点としています。よくこんな設定の仕方をしたもんだと憤りを越してあきれてしまいます。もし現場を知っている人がこの項目を作ったとすれば、そのあまりの感性の鈍さに恐ろしさすら感じます。この例示で一日中であれば、即入院が必要かと思われる状態です。例示通りであればたとえ月数回程度でもそのような行動があれば、本人の体に相当なダメージがあるでしょう。でもこのチェック表によれば、月数回にとどまれば0点です。
 加算強度行動障害にあたる子どもについては、1対1の対応が必要と思われる子どもに焦点を当て、それを報酬上でも評価する(155単位、1単位は地域や事業内容によって10円~11.52円)設定となっていますが、このチェック表には大いなる問題があると言わざるを得ません。ここまでの目安や例示でなくても行動上の障害がかなりな程度見られ、1対1的な対応が必要な子どもはもっといると思われます。今回設けられた指標が意図及び強度行動障害チェック表の内容や点数化の仕方は、もっと議論されてしかるべきと考えます。
 またこのチェック項目の聞き取りは、どのようにしてなされるのでしょうか。大阪市での状況を推察すれば、保護者だけで区役所の窓口に行き、窓口では本人を見ることもなく、保護者からの聞き取りだけで行われそうですが、それが妥当でしょうか? 問題を感じるのは私だけでしょうか?
 ついでながら、2月22日に開かれた社会保障審議会障害者部会での会議資料によれば、厚生労働省の調査で、全国の放課後等デイサービス事業所のうち、区分1にあたるのは15%余り(年度初めの時点。再判定の結果では20%を超えているようですが)。この数字を妥当と見るか、いや少ないと見るかは議論の分かれるところと思います。軽度の子どもを中心にもっと一般施策(学童保育など)での利用を進めるべきだという考え方もあるでしょう。しかし、であればもっと学童保育施策に力を入れて自治体任せにするのではなく、国がもっと財源を確保して全国的な施策にしなければ一般施策での受け入れが進むとは到底思えません。
 報酬改定資料や「今後の障害児支援のあり方報告書」などでもっともらしくインクル―ジョンを進めて、というならばちゃんとしかるべきところにそれ相応のお金をつけなければ単なるむなしいスローガンを掲げただけのものになってしまいます。

                           森