慣例を見直すこと

 最近、工藤勇一さんという東京の有名な公立中学校長が書かれた『学校の「当たり前」をやめた。』という本を読みました。本の帯にも書かれている、”学級担任制の廃止”、”定期テスト廃止”といったこと以外にも、学校行事を見直して運動会を生徒会主催にして、結果クラス対抗リレーをやめて、その日限りの対抗戦にした、といったように、生徒が社会でより良く生きていくためという教育の目的にどうしたら向かっていくことができるのか、という視点でこれまでの学校の「常識」、「当たり前」、慣例にとらわれない改善を行ったということです。(工藤さんは、これをあえて改革とは言わず改善と言っています。キャッチーな華々しく取り上げられることを嫌ったということのようです。)目的と手段の逆転になっていないか、といった視点から、ほとんどの学校関係者が疑っていなかった当たり前のことを一つずつ見直したということです。
 私は、学生時代のアルバイトを除けば、これまでずっと福祉職にしか携わったことがないですが、大学では教職課程を履修して教育実習に行った経験もあり、学校教育カリキュラムにも多少なりとも関心があります。その私が思うのは、なぜ高校までほとんどの学校で30~40人の生徒に対して一斉授業、しかも系統学習が大半を占めるのかということに対する疑問です。
 本来、何かを知り、理解できるようになることは、うれしいことであり、またもっと知りたい・わかりたいという意欲も掻き立てられるはずのものだと思います。それが、勉強なんか面白くない、学校なんて嫌だ(ずっと休みだったいいのに)、となっているのは今の日本の学校のカリキュラム、また教え方が無味平板なものになってしまっているからではないか、と思っています。そのような観点でも、工藤さんのこの本に書かれているような教育方法の改善は、いくつも参考にすべきことがあるように思いました。もちろん、それは麹町中学校という有名な学校だからできたのだ、という反論もあるようですが、工藤さんは校長がその気になったら変えること、工夫できること、改善できることはいっぱいあるはずだと言われています。
 こうしたことから、私たち福祉職に携わる者にも学ぶべきことは、自分たちが行ってきている仕事の流儀や慣例(有形無形を含めて)を、定期的に見直す機会を持つことの大切さです。私たちは、どうしても毎日積み重ねてきている仕事の仕方や流儀に、ともすれば漫然と浸ってしまっています。しかし、知見や社会状況(そしてその社会状況に生きている子どもたち、また大人たち)が変わりゆく中で、自分たちが当たり前と思って行っていることを点検し直すことはとても大切なことのように思います。これからも時々、工藤さんの本を読み返してみて、自分たち当たり前を見直して、仕事の仕方の改善を図っていきたいと思います。

                              森