学童保育基準の緩和(事実上の撤廃)に思うこと
数日前のYahooニュースや朝日新聞で報道された「学童保育の職員配置人数や資格の事実上の撤廃」について、思うところを今回は書きます。あくまで報道されたところによる情報で、詳細なところを知っているわけではありませんが、そもそも学童保育は、障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービスなど)や障害福祉サービスなどと違って、全国で統一された制度になっていません。建物などが公設であって、例えば児童館で学童保育を行っている自治体もあれば、大阪市のようにいくらかの補助金は出すけれども、あくまで民間が自前で場所も確保し、運営するという自治体もあります。大阪市では、民間の学童保育所よりも小学校内にあるいきいき放課後事業の方が他市の学童保育に近いと言えるかもしれません。このような制度設計の現状では、むしろ全国一律の職員基準を定めること自体に無理があったというのが、報道を目にした私の最初の感想です。
公営に近いところから、民間任せまで、自治体によって学童保育の制度が違うにもかかわらず、職員基準だけ全国一律を求めても、そもそも制度的な基盤が弱い(充分な運営費が確保されにくい)所では、需要(ニーズ)に応えられる事業所数が整備されない状況に陥りやすくなることは容易に想像されます。質の確保のために職員基準を求めるなら、むしろ学童保育の制度自体を自治体任せにするのではなく、しっかりした運営が行えるだけの制度に国の責任でもって行うべきだと考えます。
2015年から設けられた学童保育の職員基準は、1教室に2名以上の職員を置き、かつうち1名以上は保育士か社会福祉士などの資格を持っていて、都道府県が行う研修を受講した「放課後児童支援員」が配置されていること、ということのようです。これは、昨年度から放課後等デイサービスで設けられた職員の資格要件に似ています。放課後等デイサービスは、この資格要件が設けられてからもかつてほどの勢いではないにしても増加しています。それは、もちろんそれだけの需要(ニーズ)があるからでもありますが、ある程度の運営が見込める報酬体系でもあったという面があることも否めません。話を元に戻すと、こうして3年前から設けられた学童保育の職員基準を来年度から、「従うべき基準」から「参酌すべき基準」に児童福祉法を改めるそうです。つまり、守らなければならない基準から参考にすべき基準に変えるそうです。
インクルージョンやノーマライゼーションの観点からすれば、障害を持った子ども・療育を必要とする子どもだけを集めた放課後等デイサービスではなく、障害の有無にかかわらない学童保育のような形が望ましいとも言えます。ところが、国が責任をもった制度設計にしていないがゆえに学童保育の運営は自治体によって格差があり、結果、職員の資質に疑問符が付くこともあるやもしれません。現状、放課後等デイサービスが胸を張ってどこも一定以上の質が確保されていると言えるかどうかというと、自らも省みて心もとない限りではありますが、それでも放課後等デイサービスは、国による指定基準が細かく決められていて、技量や知識もなく、経験のない者ばかりが子どもを見るということにはならない仕組みになっています。
放課後等デイサービスは、学童保育よりもより規模が小さく、きめ細かな丁寧な関わりを持つ、という長所もありますが、そもそもインクルージョンやノーマライゼーションを推進しうる場になるはずの学童保育の制度が現状のままでは、障害を持った子どもが放課後等デイサービスに集まる状況はまだ加速するかもしれません。障害の有無にかかわらず、さまざまな面で支援を必要とする子どもが育つ場・仕組みが、今後検討されてしかるべきと思います。
森