子どもの支援で心がけたいこと
2年前の春(2016年3月)に、滋賀県で開業医をされている本谷研司さんという精神科医師を招いて研修会を行いました。私が、本谷さんを知ったのは、びわこ学園野洲(旧・第二びわこ学園)で毎年行われている公開講座で、長年にわたって「知的障害がある人が持つさまざまな事情」というテーマで話されていることを知ったことからでした。その公開講座は、あるときは「自傷行為」、またあるときは「こだわり」・・・というようにテーマを変えて考察を深められていて、その話は含蓄に富んでいて、いつも自分たちの支援のありよう・あり方を反省させられていました。そんなことからご多忙な本谷さんに無理を言って、来ていただいたのが2年半前のことでした。
この時の研修会の最後で話されたのが、「自分(障害を持った人)に誇りを持てるためには?」 という問いを立て、それについて
・生活が保障されている(概ね安心して暮らせている)
・大きな苦痛がない
・可能なかぎり自己決定が保障されている
・自分ができることを、自ら行うことができている
・周りの人とそれなりにいい関係が持てている
(それなりに認められている、尊重されている、大きなトラブルがない、
孤立していない)
・生活の中に楽しみがある
・一定以上のゆとりがある(毎日がいっぱいいっぱいではない)
ということを挙げられました。
これらは、言い換えれば、いわゆるクオリテイー・オブ・ライフ(生活の質)をどう大事にするかと考えたときの具体的な指標と見立てることができるものとも思います。また国連で1989年に採択された子どもの権利条約で掲げられた4つの柱~生きる権利、守られる権利、育つ権利、参加する権利とも相関する内容ともいえると思います。
この本谷さんが掲げた項目は、私が、相談支援の計画を立てようとするときに、検討の元としてよく使わせてもらっています(意識しやすいように、仕事机から見上げればすぐ見えるところにこの項目をプリントして貼っています)。実際には、子どもたちが、この項目に掲げられたことが充たされて生活ができているとはいいがたいことも多く、だからこそ支援の必要があり、また支援の検証がなされるべきでもあると言えるかと思います。そしてさらに言うなら、これは別に障害を持った人だけに当てはめてみるべきものでもなく、私たち自身が、ここに掲げられたような生活ができているか自己点検するようなことでもあると言えるでしょう。
本谷さんのことを引き合いに出したことで附言すると、この11月30日夜に、再び本谷さんを招いて「意思決定支援と自己決定をめぐって」というテーマでお話していただこうと思っています(研修会を行うことにしています)。また新たな気づきが得られることを期待しているところです。
森