大阪市の校長評価への懸念
つい数日前(1月下旬)に、マスコミ報道で、来年度から試行的に、市立小中学校長への賞与支給にあたって、大阪府・市が実施する学力テストで、あらかじめ各学校が目標値を設定して、どれだけ達成できたかによって賞与額の評価の一部に反映させる仕組みを導入する、ということが私たちが知るところとなりました。
昨年夏ごろから、市長がそのような仕組みの導入を検討していると既に報じられていましたが、つい先日の報道では来年度の試行実施、2020年度からの本格実施とまで詰められているということのようです。その仕組みを導入する背景としては、全国学力テストの平均値で政令指定都市の中で、大阪市が最低の数値を出したことにあるようです。
このような話が出るたびにいつも思うのは、このようなことを考える時は、知的障害や発達障害の子どものことは、そもそも念頭にないのだろうな、ということです。運用上の問題で、支援学級に籍を置く子どもは、その学力テストの対象にいれない、ということはできるのかもしれません。でも、支援学級に籍を置かない障害を持った子どもあるいはその疑いがある子どもの場合はどうなのでしょうか? 発達障害の子どもで、不登校がちの子どもを多く見てきています。潜在的な力はあったとしても、そもそもあまり学校に行くことができていなければ、いわゆる学力でついていきにくくなることは十二分にあり得ることです。とすれば、彼らがまず学校にしっかり来ることができる働きかけや環境整備が必要になってきます。ですが、なかなかうまくいっていない例をいくつも私も見てきています。
さて、こんな状況で学校(校長)はどういうふうに障害を持った子どもたちに働きかけていくのでしょうか? また学力テストの扱いはどうするのでしょうか? 今まで以上にいわゆる学力向上を重視する学校運営に傾くとすれば、そのレールに乗りにくい知的障害や発達障害の子どもは、普通校ではお客さん扱い、いや下手すると邪魔者扱いされる懸念を抱くのは、私だけでしょうか?
大阪市教育委員会には、インクルーシブ教育推進という担当がいらっしゃいますが、このような方向でインクルーシブ教育は進むのでしょうか? 障害を持った子どもはできるだけ支援学校に行ってね、という空気が強まらないかと気がかりになります。
学校教育が、いわば学力テスト対策の授業などを行っていく方向に傾斜し、体験学習やいわゆる教科学習以外の学級づくりや(抽象的な言い方をしますが)子どもの心を育てるいわゆる情操教育などが軽視されていくことにならないか、ということもとっても気になるところです。 報じられているところでは、校長への評価にとどまらず、学校への予算のつけ方にまで関わってくることまで考えられているようです。こうなると学校間で学力競争に走ってしまいかねません。
学校が、学齢期にある子どもの生活の大きなところを占めている現代社会において、学校で、子どもをどう育てていくのか、どう育っていってほしいと願うのか、と考えたときに、今回の市教育委員会の出した方針には危機感すら覚えます。ぜひこの方針については再考していただきたいと私は思います。
森