報酬改定検討チームの議論から見えてくること

 3年に1回行われる障害福祉サービス等報酬改定は、報酬改定のある前年に(今回で言えば、2017年5月~)厚生労働省に実質、官僚を中心とした報酬改定検討チームが設置され、有識者がアドバイザーとして官僚が作った改定案に質問し、意見を述べて8~9か月かかって報酬改定を決めていくという形をとっています。だいたい改定される年の2月ごろに改定される報酬体系・単価が提示され、1か月間のパブリックコメント期間を経て決定されるという仕組みですが、パブリックコメントは儀礼化しているきらいが強く、パブリックコメントに対する厚労省の見解が述べられますが、原案が変更されることはまずありません。ですので、関係事業者は、この2月に出てくる報酬改定の方向・数字が気になるところですが、実はその前の検討チームの議論でも注目すべきことは随所に見られます。
 今回の報酬改定検討チームで障害児支援に関する議論があったのは、2017年9月22日の検討チーム10回目の会合です。厚労省のホームページに資料・議事録が掲載されていますので、インターネットを見ることができる環境のある人にとっては、だれでも見ることができます。
 まず、今回の法改正・報酬改定で新設された居宅訪問型児童発達支援について、「子ども自身の理由により著しく外出が困難」という定義づけに対しても意見を述べるアドバイザーがいることがわかります。
 通所支援については、事業所も利用者も請求金額も大きく増加していることを踏まえたうえで、「地域によっては放課後等デイも競争が激しく、選ばれないところが出てきていて…(中略)…市場原理が働いて、基本的にはいいと思うのです。ただ、気をつけなければいけないのは、この時の市場原理における消費者というものは、選んでいるのは親ですね。本当の消費者である子どもが利益の市場原理になっているのかどうなのかというのは非常に微妙なところだと思うのです。」と述べているアドバイザーもいます。その後続けて、「ただ部屋の中に集めて、テレビを見せて、ごろごろさせているだけというところ」について「きちんと子どものための支援にしなければならない」と述べる一方で、「では中の療育の質というものをどういうふうに考えていくのかのきちんいうのは結構難しくて、学生だけ集めて、専門性もないままやっているのはけしからぬという意見が非常に多いのですけれども、子どもは結構、学校でもぎりぎり指導させられたりストレスをかけられて、家庭でもいろんなことを言われて、放課後等デイに来た時だけお兄さんのいところに受けとめてもらえていいみたいなところが結構あったりする」とも言ってはります。そしてそういう子どもの状態、置かれている状況をきちっと見ていく(アセスメントを行う)重要性に触れ、相談支援の重要性と質も問題にされています。ここのところは、私がどれだけのことができているかと自問すると耳が痛い指摘でもあります。自戒として、よりしっかりしたアセスメントを行い、できる限り子どもの立場に近づけるように努力したいと思います。

 ただ、こういう風に議論されているのに、相談支援については今回の報酬改定でもいまだ正当な評価を得られているとは思えません(自分のことは一旦、棚に上げて、ですが)。その一方で、放課後等デイサービスについては、より重度の子どもを受け入れている事業所、とりわけ医療的ケアを必要とする子どもや強度行動障害と呼ばれる子どもを受け入れている事業所の対する評価が一定進んだ面もあります。
 自分たちの支援の質・内実を検証しつつ、なけなしの力であってもより望ましい制度になっていくように声を挙げ続けなければ、と思っています。

                                                             森