報酬改定で変わったこと、変わらなかったこと

 今年4月の障害福祉サービス等報酬改定は、6年に一度の医療・介護・障害福祉のトリプル改定の年でもあったことから、障害児通所支援にとっても旧児童デイサービスから、児童発達支援と放課後等デイサービスに再編された2012年からでは、一番大きな改定となりました。利用時間による報酬の区分分けや不登校児への支援を評価する個別サポート加算Ⅲや重症心身型デイでの入浴支援加算などの加算の新設、個別サポート加算Ⅰや強度行動障害児支援加算などの見直しなどかなり多岐にわたる改定となりました。従来事業所が独自に取り組んできたところが加算となって報酬上で評価されるようになったりして、報酬改定で良くなった点もある一方で、またしても手つかずで変わらなかったこともいくつもあって、いつになったら根本的に変わったて行くだろうかと思うところもあります。
 まずその一つが、放課後等デイサービスが、学校に籍を置いている子どもという要件を頑なに堅持して、中学校卒業後に進学しなかった子ども、あるいは高校等に進んだものの、中退してしまった子どもは、制度の決まりごとの関係で、(未就学児=幼児を対象に制度設計されたはずの)児童発達支援になるという不自然さは全く変更されていません。もちろん、例外的に”児”ではなく障害者を対象とした障害福祉サービスを利用できる場合もありますが、まだ障害児通所支援を利用したい場合に放課後等デイサービスではないというのも年齢層で見ると何とも奇妙です。また、6年前に新設された居宅訪問型児童発達支援が、対象児の限定や人員基準上の問題が大きいのか、一向に増えない状況にある点も是正されてはいません。
 さらに、これは障害児通所支援の制度的な位置づけにも関係してくることですが、今回の報酬改定に先立つ厚生労働省で設置された障害児通所支援の在り方に関する検討会(2021年)などでも議論された放課後等デイサービスや児童発達支援を利用している子どものきょうだい(障害があるとは認定されていない子ども)の放課後等デイサービス・児童発達支援の利用、さらには地域の子どもの利用(つまり児童館的な役割を担うこと)については、全く触れられることもない改定となっていることなど、まだまだ不十分な制度設計と思わざるを得ない点が挙げられます。もし放課後等デイサービスや児童発達支援が、児童館的な役割を担うということになれば、現在の受給者証を取って、利用するという個別給付という形にまで関わる問題につながっていきますが、しかしこの方向性を実現できるなら、これもインクルージョンの一つの在り方(在りよう)にもなることだとも考えられます。今ある制度だけを前提に考えるのではなくどうすれば、、国が声高に掲げる一人一人の「子どもの最善の利益」につながるのかをもっと広い視野で、そして地道に考えたいものです。

                                                                  森