堤未果さんが受けた教育
『ルポ 貧困大国アメリカ』などの著書があるジャーナリスト・堤未果さんが、朝日新聞の高橋美佐子さんのインタビューに応えて、語った自身が小学校から高校まで通った和光学園(東京都町田市)での教育に触れて、「子どもに×をつけない教育方針。先生たちは『正しいか間違いかを決めるのは君たち自身だ』と言い、最後まで答えを教えてくれない授業ばかり」「教室では自分の意見を自由に口にでき、途中で意見を変えても責められない。『白か黒』『善か悪』のような二択を迫るデジタル的な二元論より、『すき間』が大事にされ、異論や疑問を排除せず納得いくまで話し合う。時間がかかって非効率でも、目的地より旅そのものに価値を置くから、途中で得る『気づき』が宝物」「他者の痛みを感じたり、遅い友だちを待ってあげたり、弱い自分を認めることも、全部『体感』の学び」だったと語っています。「おかしいと思ったら口に出すことに価値があり、沈黙や同調は評価が下がった」とも堤さんは言います。
和光学園を設立したのは、教育学者・梅根悟という人ですが、梅根さんはコアカリキュラムを提唱した人でもあり、現在でも日本の教育の主流の系統学習・一斉授業の方法とは、かなり異なる手法、教育方針・内容であったことを物語る話です。堤さんが和光学園に通った1970年代後半~1980年代後半と同様な教育が今も和光学園で行われているのかどうかは知りませんが、現在の日本の学校教育の在り方を考えるうえで、いくつもの大事な姿勢、視点を与えてくれているように私には思えます。子どもが(そして大人も)主体的に学ぶ、考える、物事を多角的に捉えていくということを堤さんが語るエピソードは教えてくれています。
森