今春の報酬改定から見えてくること

 障害福祉サービス(障害児支援も含む)は、3年に1回、報酬改定がなされます。医療の診療報酬や介護保険の報酬改定と同様にとらえても大きくは外れませんが、診療報酬は2年に1回の見直しなので、その間隔は違います。で、障害福祉サービスは、この4月から法改正・報酬改定の実施がなされました。詳しくは、厚生労働省の「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定について」というタイトルで検索していただければ内容が確認できます。

 では、今回の法改正・報酬改定で、国は障害福祉サービスなどをどのような方向に持っていこうとしているのか、重点項目は何か、ということを私なりに解釈してみたいと思います。
 まず、どの事業(サービス)も加算や減算が新設また細分化され、一定基準を満たさない事業所には、より報酬が低く抑えられる一方で、より支援が必要と思われる対象者への支援を行う事業所には、加算を算定することで報酬が増える仕組みに持っていこうとしていると見られます。
 では、より支援を必要としている対象者は、どんな障害を持った人なのでしょうか? 医療的ケアを必要としている人(児童)、強度行動障害が見られる人(児童)、病院や入所施設から地域社会に移行しようとしている人(主に精神障害者・知的障害者)等と見ているようです。報酬改定の概要でも、今言った人たちへの支援の項目が挙げられていますし、それに沿った事業及び加算の新設・拡大が各事業ごとに設けられています。
 一例をあげれば、児童発達支援・放課後等デイサービスで新設された強度行動障害児支援加算は155単位となっており、これは月あたりの延べ利用者数あたりでかけると、ほぼ一人分の人件費が出るぐらいの大きい加算です。他事業でもこれほどの額でなくても強度行動障害と呼ばれる人への支援に取り組む事業所に対しては、強度行動障害支援者養成研修の受講・修了を要件として、このような加算の算定を可能としています。そのような例は、医療的ケアを必要とする障害児・者への支援に関わる加算の拡大が各事業で設定されていることにも表れています。また地域生活に移行した或いは移行しようとする人への支援については、自立生活援助や地域定着支援の新設にも見られるように重点化を図っている姿勢を読み取ることができると言えます。

 一方で、一般就労が可能と思われる人に対して、就労定着支援の新設に見られるように、また軽度の障害児等に対して一般施策(放課後児童クラブ、保育園・幼稚園など)への移行を促す加算も新設されたり、といったような形で、総体として障害福祉等の利用者数の伸びを抑える工夫も試みている意図も感じられます。

 今回の法改正と報酬改定で、今言ってきたような方向性と意図がどのような成果につながるのか個人的には疑問に思うところも多々あり(指定基準や人員基準、また運用上の問題も含めて)、各地でどのような状況を見せるのか、少なくとも1年ぐらいは様子見をしないといわからないと思っています。
 ただ言えるのは、強度行動障害と呼ばれる人・子どもへの支援、医療的ケアを必要とする人・子ども、また重症心身障害児・者、精神障害者への支援の強化が図られること自体は望ましいと思っていますし、そこに福祉という分野の意味があるとも思っています。
 放課後等デイサービスや児童発達支援などの障害児通所支援がなぜ児童福祉に位置づけられているのか、そのことを省みることは事業所の存在意義にも関わることですが、それはまた次回以降に書きたいと思います。
                                森