世界を知ろうとすること~スピッツ「夜を駆ける」に寄せて

まだ1か月近く残っていますが、世界史的には、今年はロシアがウクライナを侵攻した年として記録、そして記憶されることになるだろうと思います。このブログの多くは、子どもに関わること、障害児・者に関わることを中心に綴っていますが、子どもの養育、障害児・者への支援は、平和が保たれていない社会では、その基盤が大きく損なわれることになるゆえ、平和・戦争について省みないわけにはいきません。

ロックグループのスピッツが、数年おきに行うファンクラブ限定ライブに、今回も参加できたのですが、毎回、ファンクラブ会員がライブで聴きたい曲を3曲、リクエスト(投票)でき、どの会場でも上位3位までは演奏してくれます。ところが、今年11月に行われたこのライブ(前5本)では、新曲の「大好物」がどの会場でも1位だったのは、頷けるのですが、前回までではあまり上位に上がっていなかったように思われる「夜を駆ける」(もちろん、YOASOBIの「夜に駆ける」とは全く関係ありません)が、ほとんどの会場で2位または3位だったのは、ちょっと意外でした。しかし、「夜を駆ける」が1曲目として収録されている『三日月ロック』は、作詞作曲を手掛ける草野政宗が、2001年に起こったニューヨークでのテロに触発されて作ったと明言しており、その発売日がテロのあったちょうど1年後の2002年9月11日であったということもそのことを物語っています。

特に、この1曲目の「夜を駆ける」は、僕が「嘘で塗り固めた部屋を抜け出して」「夜空」を「見上げ」、おそらく中東のアフガニスタンかイラクかを思わせる道路・「誰もいない市街地」で、「君と遊ぶ」というのです。そして、「夜を駆けていく 今は撃たないで 滅びの定め破って 駆けていく」というのは、西側諸国のいう正義の戦いに対する異を唱える歌だとずっと感じてきていました。それゆえに短調で哀愁のあるメロデイーは、必ずしも誰もが好きな曲とは言えないと思っていたので、今回の投票結果が、ロシアによる侵略がクローズアップされたゆえにファンが今、聴きたい曲として選んだのではないかと思えました。(私にとっては、数あるスピッツの曲でも特別な曲で、この曲を聴くたび泣けてしまうものです。)

スピッツ・草野が書く詞は、一つ一つの言葉は難しい言葉はほとんどないのに、その言葉の組み合わせで、なんともシュールな世界に誘われ、隠喩・暗喩の多い歌詞になっているので、この私の解釈も一つの見立てにすぎません。ただ、9・11テロだけが、際立ったテロと捉えるのは一面的で、そのテロが起こるまでアジアやアフリカ諸国で先進国と言われる国々によるテロや殺戮がどれほど行われた来たかを私たちはもっと知らないといけないのだと思います。それは、さまざまな事情で外国から日本に来て住む・仕事をする人々、とりわけ難民の人々の生きてきた背景を知っていくことにも繋がります。まだまだ、私たちは世界を知らなすぎると思い直します。