一人暮らしをする自閉症の兄とその妹の話

 スーパーエイトの安田章大が一人暮らしをしながら、清掃の仕事についている自閉症の青年役を演じ、カウンセラーの仕事をしているその妹役をのん(能年玲奈)が演じている「平行と垂直」という映画を観てきました。小さな商店街を抜けたところにチンチン電車の電停があり、勝手に世田谷線かなと思っていたら、なんと!綾之町。阪堺電車で、ロケ地に堺が使われている、また話の中でもラピートに乗って、というくだりが出てくる関西色濃い作品(主演の二人も兵庫県出身)。鉄オタの私はそれだけでも引き込まれる要素があり…といってもそれは伴奏的な話。
 その妹が結婚するということが作品の話の軸で、見たところ中程度以上の自閉症であるゆえに、言葉での世界になじみにくく、周囲の人たちとの間で誤解を生み、偏見にさらされ、窮屈な思いを抱える日常を送っているという様子が、些細ないくつかのエピソードで描かれていきます。妹は、思わず「その表情の奥にある心の声を聴きたい」、とカウンセリングに来たクライエントに口走ってしまいます。ここでいくらかの支援スキルを知っている私たちは、pecsやマカトンでいくらかでも思いを伝えられるのではないかとも思いますが、仮にそれを使えたとしてもやはり相互のディスコミュニケーションが完全に払しょくされるわけではありません。
 映像で出てくるエピソードの一つ一つは、どれも重たいもので、自閉症、知的障害の人がいかにこの世界で生きにくさを抱えているかということを痛切に訴えかけてくるものですが、脚本・演出はその深刻なことも時にユーモアを交えて、あえて軽やかに爽やかささえ感じさせる語り口でつむがれてました。時に、安田章大が演じる所作が度を過ぎているのではないかと見えなくもないですが、きれいに整えられていないと気持ちが落ち着かないというところは、自閉症に関わる人であれば、だれしも遭遇していることかと思います。融通の利かなさやイレギュラーなことへの対応が難しい(苦手)ことなど、それで周りの人に「迷惑」をかけたとしても、グループホームの代表者が言うように、この世に迷惑をかけないで生きている人はいるのでしょうか、という問いとともに障害がある人との共生というテーマに私たちをいざないます。近年、出色の映画と言えると思います。

                                        森