ワールドカップに見る国際(国を超えて)

 私のような、数十年来(神戸製鋼V7時代、また同志社大学が強かったころから)のラグビーファンからすれば、今回、こんなにもワールドカップが盛り上がり、あちらこちらでにわかファンが増えるとは、まったく想像していませんでした。4年前に、スポーツ史上最大の番狂わせと言われた日本代表が南アフリカを破った試合の後も五郎丸ポーズなどで、しばし騒がれましたが、継続的なラグビー人気につながるようなことは見られなかったように感じていました。それもこれもかつてのラグビー人気の時代を知っているがゆえに(ちょうどユーミンの「ノーサイド」が流行ったころ)、日本ではまだまだラグビーはマイナーなスポーツやなあ、と思っていたものでした。大会前は、直に始まるラグビーワールドカップよりも来年のオリンピックの方に、より世間(と言うより正確にはマスコミ)の関心はあるように思えました。ところが、日本代表のベスト8進出という活躍もあって、テレビ視聴率(今年度最高)や決勝の観客動員数(会場の横浜国際競技場で過去最高)に見られるような予想外の盛り上がりを見せ、それはラグビーというスポーツの魅力を多くの人に知ってもらえることにつながり、嬉しいことでもあります。
 何よりも4年前との違いは、ワールドカップが日本で開かれたことで、強豪国をはじめとした多くの外国人が日本に来てくれたことです。私が観戦したアイルランド×ロシアにも多くのアイリッシュの姿が会場はもとより、神戸の街中で見られ、大会期間前後は、それこそニュージーランドやオーストラリアなどのジャージを着た人々を多く見ました。出場国のキャンプ地となった町では、チームと町の人々の交流もずいぶんあったようで、例えば、ウエールズと北九州市が互いに感謝しあう広告を新聞に出したり、台風の影響で試合が中止になった釜石市で、カナダの選手が泥掃除や家具の運び出しなどのボランティアを行ったりといったことが報道されました。人と人の気持ちが通い合うまさしく国際交流があちこちで見られた、ということだと思います。
 ラグビーの国代表が、厳密には政治的な国代表でなく、また国籍のみで規定されるのでもなく、どこのラグビー協会に所属しているかによる協会主義を取っていることは、前にもこのブログで書きましたが、優勝した南アフリカは、まさしく同国でかつては白人のスポーツとされていたラグビーが、今や同国史上初めての黒人のキャプテンのもとで3度目の優勝を勝ち取ったことは、これこそ人種の違い、また国を超えた国際を象徴するものだと思わされるものでした。優勝後のコリシ主将のインタビューは、いまだ人種間でさまざまな問題を抱えている同国の状況を踏まえながらも人間味にあふれる素晴らしいものでした。また、このようなインタビューにふれたことで、もっともっと世界を知っていくことが大事なんだとも思う機会にもなりました。

                              森