ラグビーの魅力

 日本でこの9月~11月に開かれるラグビーワールドカップ。オリンピック、サッカーワールドカップと並んで世界三大スポーツ大会と言われていますが、日本では間もなく開かれるラグビーワールドカップよりも、来年開かれる東京オリンピックの方がはるかにマスコミで取り上げられています。オリンピックにはほとんど関心のない私には、何ともやるせない気分ですが、あと3週間となった今日この頃、日増しに気持ちの高鳴りを覚えているところです。
 よくラグビーはルールがわからない、1チームの人数が多くてポジションの違いも役割もよくわからない、という人が多いかと思います。かく言う私も観戦を始めたころはよくわかりませんでした。でも、ちょっとずつルールがわかるようになり、ボールがどう運ばれるか(誰かがボールを持って走るのか、パスするのか、蹴るのか)に注視して、その動きに、そしてボールのないところで選手がどういう風にプレーしているか、攻守に備えているのか、といったことまで追いかけるようになって、その魅力に取りつかれています。

 といっても、ここで書こうとしているのは、ラグビーがどんなゲームかというのではなく、他のスポーツにはあまり見られないラグビーの魅力をいくつかあげることです。
 ラグビーにもサッカーのようにレフリーという人がいて、試合をコントロールしていますが、ラグビーのレフリーは、反則を見張って取ることが中心的な仕事ではなく、選手がよりスムーズに試合を行えるようにコントロールするのが主要な仕事と言えるかと思います。そのために、反則を取ったときにもなぜ反則とみなしたか、をチームのキャプテンに伝え、場合によっては同じような反則を犯さないようキャプテンからチームの選手に周知するように促したりもします。そして、いいレフリーは、できるだけ反則を取らないで済むように、今行われているプレーに対してどうしたら反則にならないか(逆に言えば、こうしたら反則になるよ)ということを選手に声掛けしています。ですから、ジャッジする人というより、選手と協力しながらよりよく試合を運ぶかに傾注している人と捉えられるように私は思っています。
 スポーツの中には、ゴルフやカーリングのように審判・レフリーがいない競技もありますが、ラグビーももともとはレフリーはいなかったそうで、ボールデッドとなったときにどうするかをキャプテン同士で話し合って、試合を再開した、という話を聞いたこともあります。(カーリングは、厳密には、中心とストーンとの距離を計測する人がいますが、多くの場合、両チームの視認でどちらが得点したか合意して、次のエンドに進んでいて、計測員が登場することはめったにありません、少なくともテレビで視聴している限りでは。)
 ラグビーには、仮に反則が行われても反則を行っていない方がボールを持って優位にゲームを進めていたら反則を取らずに流すアドバンテージというルールもありますが、これは状況によってかなりの時間アドバンテージが生きていることがあり、その裁量もレフリーに委ねられています。ルールは、実は毎年のように細かいところが変わっていて、それは基本的には選手の安全とボールがより動くことを促すように変わっていっていると私は理解していますが、大事なことは「順法(ジャステイス)よりも公正(フェアネス)を」という精神だと、藤島大さんという人は、師・大西鐵之祐(元日本代表監督)から教わったことを語っているようです。
 つまりそのプレーは、ルールを守っていたかどうか以上にきれいなプレーか汚いプレーかを選手一人一人が判断して試合を遂行していくものだと言う教えです。これは、あるべきレフリーの姿とも共鳴するものだと私は思います。もちろんプロ化が進む現在は、TMOといって、トライにつながるプレーや悪質な反則があったかどうかをビデオ判定する仕組みが入ってきてはいますが、もともとはラグビーはもっと曖昧模糊とした部分があったように感じています。

 そして、もう一つラグビーの魅力を伝えたいことがあります。
西ヨーロッパでは、6か国対抗と言って、イングランド、ウエールズ、スコットランド、アイルランド、フランス、イタリアで毎年春に行われる対抗戦があります。イギリスではなく、イングランド以下ラグビー協会ごとの塊でチームがわかれています。なので、政治上は、北アイルランド(イギリスの一部)とアイルランド共和国に分かれいますが、ラグビーチームは一つのアイルランドとして他のチームと対することになっています。確か、1999年のワールドカップからは、ラグビーアイルランド代表の歌が作られて、国歌の代わりに試合前に歌われるようになったといいます。このように、政治的な国を超えるっていうことは、とても素敵なことのように私には思えます。(イギリスは、イングランド、ウエールズ、スコットランド、北アイルランドから構成されていて、あのユニオンジャックの国旗もそれぞれの地域の旗を組み合わせたような印象を受けます。)
 また今回の日本代表は、半分ぐらいの選手が外国出身なのですが、ラグビーの国代表は、国籍が問題ではなく、その国とどれぐらい関わりがあるか(その国で3年以上連続して居住している)かも国代表になれる一つの条件となっています。それ以外にたとえ海外に居住していても親のどちらかがその国の人であればいい、という場合もあり、かなり条件は緩いと言えるでしょう。これを国際化という風に捉えていいという風に思うか、いや日本人だけでないといけないと純化を求めるか、人によって意見が分かれるところかもしれません。
 でも私は、先にあげたアイルランドのように政治上の国よりも協会単位という枠組みに魅力を感じる方です。もともとU2やエンヤといったアーテイストが好きな私は、今回日本の対戦国ではありますが、アイルランドにも注目してワールドカップを観戦したいと思っています。、

                               森