「障害児通所支援の在り方に関する検討会報告書」から見えてくること

 今年の6月から約4か月にわたって計8回開かれてきた障害児通所支援の在り方に関する検討会が、10月13日で最終回となり、報告書案の大筋が了承され、確定版について、座長及び事務局(厚生労働省障害児・発達障害者支援室)に一任され、1週間後の10月20日に確定版が公表されました。全部で40ページ強からなる報告書は、これまで多様な事業形態が混在し、未整理なままだった障害児通所支援について、一定の整理を図り、また課題となっていた事柄についてもいくらかは改善策が提示されたと私には思えました。
 平ったい言い方をすれば、一般施策の保育所や学童保育所にはなじめなかった(或いは、なじみにくい)障害がある子どもの居場所でもあった児童発達支援や放課後等デイサービスが、制度が定着するようになっていく中で、そのような形態だけでなく、習い事と類似したものまで指定を取って運営されることで、それはそもそも福祉として公金(税金)を使って行うことが妥当なのか、私も疑問に思ってきていました。よほど高収入の世帯でもない限り、1か月に10回通おうが、20回通おうが、保護者の負担額が0円~4600円で済む(実費は除く)という仕組みになってしまっていることには、当然ながらさまざまなところから批判も出ていました。今回の検討会で、今後通所事業所としてどのようなことを行うのかガイドラインの見直しを行って、そのガイドラインを満たさない場合は、通所事業所の指定対象にしないということが初めて明記されました。その上で、通所支援の基本は、総合支援型(仮称)であって、理学療法などの専門的な支援は、特定プログラム特化型(仮称)として、総合支援型とは類型を分けることが示されました。さらにこれまで障害児通所支援ではあえて省みられていなかった実質の支援時間の長短に応じた報酬設定を検討する、ということも記載されました。この支援時間の長短に応じた評価については、かねてから財務省も指摘したところであり、この点についても初めて踏み込んだ取りまとめになったかと思います。
 また、放課後等デイサービスについては、これまで対象としてはじかれていた専修学校生についても、必要に応じて利用を認めるということも記載されました。この点もかねてから各方面から指摘されてきていたにも拘わらず、厚労省は説得力の弱い理屈をつけて頑なに対象外としてきた方針をやっと転換したと言えます。ただし、中学校を卒業して高校などに進学しなかった児童、また進学したけれども中退してしまった児童については、放課後等デイサービスの対象とするのか別の手立て(制度)とするのかは、引き続き検討、という文言になり宿題が残ったと言わざるを得ません。さらに検討会のある構成員が触れていますが、学校に在籍はしているけれども不登校で、日中家に引きこもっている子どもを放課後等デイサービスが朝から受け入れて対応している例は報酬上評価されていいのではないか、というようなことも検討会の中で議論されています(現在は、学校休業日でない限り、いくら子どもを朝から受け入れても放課後単価しか算定できない規定になっています)。ただ、この議論を反映した記載は残念ながら報告書には見当たりません。(私は、成文化された報告書だけでなく、検討会の最後の3回は事務局に申し込んでYouTubeで傍聴したので、そのような議論を目にすることができました)
 このように見てきますと、障害児通所支援が何を大事にしなければいけないのか、支援が必要にもかかわらず支援に繋がりにくい子どもをどう支援していくのか、福祉として果たす役割は何なのかなど、障害児通所支援に携わる者は、そのことを常に自省する中で日々の支援にあたらなければならないと噛みしめます。
 最後にもう一点、報告書の中で、これまで障害児通所支援で謳われてきている、例えば日常生活訓練とか集団生活適応訓練などの訓練という文言も今の時代ではそぐわないのではないか、訓練ではなく支援に改めるべきではないか、というようなことも触れられています。ただ、この点になると、そもそも障害者総合支援法でも訓練等給付などの文言があるので、他法も含めた文言の整理が必要になってきて、ここには若干時間がかかるのかもしれません。とは言え、そのような問題意識が検討会の中であったことは注視すべきことと思います。
 いずれにせよ、これまであまりに未整理なまま事業所数・利用者数が急増してきている障害児通所支援について、一定の整理が図られ、また課題となっていたことにも一定の前進が報告書には見られるとは言えると思います。今後は、この報告書に基づいてどのように制度の改編が行われていくのか、引き続き注視していく必要があるように思います。

                                                    森