「障害児通所支援の在り方に関する検討会」はどこを目指すのか?

 先週・6月14日に、厚生労働省は、「障害児通所支援の在り方に関する検討会」を立ち上げ、9月までに月2~3回の集中開催で、現在の仕組みになった2012年度以来の大きな再編も視野に入れているのか、ということが第1回検討会の議事資料をざっと見て思いました。検討課題案に付随した調査データなどの資料をまだ詳しく読み込んでいないので、これから自分たちの支援を振り返るうえでもしっかり読み込んで、厚労省が検討しようとしている事柄の妥当性やまた検討の先に立てようとしている方向性が、数年前まではもっと議論のもとに置かれていたはずの「子どもにとっての最善の利益」をちゃんと担保に置いて、再編が図られようとしているのか、注視する必要があると思っています。
 検討会のメンバーは、従来なら首都圏に住む人たちで固められるところが、コロナ禍を受けて昨年度からめっきり増えたオンライン会議という形が、今回の検討会でも踏襲されたことも関係しているのか、行政3名のうち1名は大阪市の障がい支援課長が入りました(ほかの2名は、千葉県柏市、神奈川県)。大阪市は、放課後等デイサービスと児童発達支援を合わせると1000カ所を超える指定事業所があり、これは多分全国でもトップクラスの事業所数なんだろうと思います(放課後等デイサービスと児童発達支援の指定を1事業所が同時に取っている場合も多いので、実際の場所では何割かは少ないですが)。支給決定日数が、月31日という受給者証を目にすることも決して少なくはないので、これはおそらく全国的にもそんなにあることではないだろうと思います。そのような自治体だからこそ、厚労省から検討会のメンバーとして声がかかったのかもしれません(もちろんこれは、単なる推測でしかありませんが)。ちなみに検討会は、有識者(大学教員や小児科医)、支援関係団体、行政など14名から構成され、厚労省から出される案に対して意見を出してまとめていく形が取られ、9月には報告書を出す予定のようです。
 今年度、障害福祉サービス等報酬改定が実施されましたが、この3月に公表されたこの報酬改定案に対するパブリックコメントの結果でも、他事業に比べて障害児通所支援に関する意見(コメント)は、突出して多かったのですが、それだけ現在の障害児通所支援の在り方や報酬体系について、疑問がある、不安がある、あるいは不合理を感じる人が多いということ(それもちゃんと意見を厚労省に伝えたいという人が多いということ)を示しているのだと私は捉えています。かくいう私もパブリックコメントを出した一人ですが。
 現状の通所支援がかなり多彩であること、つまり制度発足当初からあった学童保育的な事業所から、補習塾的なところ、運動特化型、音楽や絵画特化型、SSTやLSTを主体に療育するところ、等々、受け入れ時間も保育的な観点で長時間受け入れているところ、1時間以内で実施するところなど、いろんな内容や形がないまぜになっていて、充分な整理が行われているとは思えないことなどが背景にあると思われます。また、インクルージョンという観点に立った時、障害がある子どもだけを集めた障害児通所支援という形がどうなのか、しかし一般施策である学童クラブ・留守家庭児童対策などは、国が責任を持った施策ではなく、自治体によって方策がまちまちであり、単に一般施策に統合したり、一部を移したらいいということで片付く話ではありません。子どもの最善の利益という観点に立った時、どういう制度が望ましいのか、そしてそれを作っていくのは、そう簡単な作業ではないと思います。厚労省が、この検討会を立ち上げた意図の一つとして、増え続ける障害児通所支援の総量を抑えたい、ということもあるのは、検討課題案を読めば明らかで、地域によっては、また利用者の状態によっては、需要より供給が超えている面もあると見ることは妥当と思われるので、厚労省の問題意識もわからないわけではありません。子どもの最善の利益と、それを児童福祉、ないしは障害児福祉としてどうあるのが妥当なのか、検討会任せでなく、私たち支援者も考えていかなければいけないことだと思います。

                                                      森