「障害児通所支援に関する検討会」が「子どもの最善の利益」につながるためには・・・

8月4日から、厚生労働省は「障害児通所支援に関する検討会」を立ち上げ、来春までに報告書を取りまとめというスケジュールを発表しています。この検討会は、昨年度に開かれた「障害児通所支援の在り方に関する検討会」が取りまとめた報告書を踏まえて、現在の障害児通所支援の再編を具体化していく作業になることかと思います。

ちょうど昨年(2021年)秋に発表された障害児通所支援の在り方に関する報告書(以下、「報告書」)は、①現在の福祉型と医療型に分かれている児童発達支援センターの一元化、②障害児通所支援における(仮称)総合支援型と(仮称)特定プログラム特化型への類型化、③子ども・子育て一般施策への移行推進、④障害児通所支援の調査指標について、⑤障害児通所支援の質の向上についてなどを提言していますが、今年の検討会では、この報告書に基づいてより具体的な検討をしていくものだと思われます。事務局(厚生労働書)や構成員による検討に先立って、関係団体ヒアリングが行われ、8月30日にまず7団体が意見を述べています。団体によって、総合支援型を基本とすべき、いやいや外見的にはただ絵を描かせているだけに見えても障害特性に配慮したことをしているから特定プログラム特化型でもいいではないか、医療的ケアや重症心身障害児にはこの類型化はなじまない、等、様々な意見が出ていることを検討会資料から読み解くことができます。

ただいずれにしても、現状を踏まえ再編するにしても、意図することが現実的に機能する制度にしていかないと、結局より良い支援につながらず、つまりは個々の子どもの生活の質の向上(子どもの最善の利益)に結び付かないことになりかねません。そのような視点に立った時、真っ先に気になったのは、児童発達支援センターや地域自立支援協議会に、およそ現実的ではないと思われる過剰な役割を求める提言が出されていることです。たとえば、大阪市にある児童発達支援センターは福祉型、医療型を合わせても11か所しかなく(行政区24区のうち8区に偏在)、このセンターが750カ所を超える放課後等デイサービスなどにスーパーバイズやコンサルテーションを行うなど物理的に不可能と言わざるを得ません。もし、児童発達支援センターにそれだけの役割を担わせるのなら、それだけのことを行える児童発達支援センターの人員基準やもちろんその基準に沿う報酬設定がなされないと掛け声倒れに終わる可能性は非常に大きいと言わざるを得ません。大阪市で言えば、単純に割り振って11のセンターが2行政区以上の事業所をカバー、それも放課後等デイサービスと児童発達支援を合わせるとおそらく1センターあたり100カ所近い事業所に目配りしないといけないわけで、いかに報告書がうたうことが非現実的なことを掲げているのかがわかります。地域自立支援協議会についても、協議会は本来業務とは別に、ほとんどの場合、参加事業所・団体は手弁当で運営しているのが実態で、また地域によって活発に活動されているところもあれば、有名無実に近いところ、中には未設置の自治体もあると聞きます。このような現状で、支援困難事例の検討や対応などはまだ取り組めるにしても、事業所の外部評価など誰がどのように主体的に実際、取り組んでいけるのか、疑問に思わざるを得ません。

子ども子育て一般施策への移行にしても、理念は立派ですが、特に学齢期の学童保育や児童館などの施策は、自治体間でばらつきがかなりあり、制度が脆弱な自治体で移行を無理に進めると結果的に障害がある子の行き場がなくなる恐れは相当程度にあると見ています。現状ですら「いきいき(大阪市での放課後クラブ類似事業)が嫌やからデイに行きたい」という子どもたちが多くいる中で、一般施策をより充実させなくては、結局、子どもの最善の利益にはつながらないことになります。理念と制度改編が相反することにもつながりかねません。

今後、月1~2回のペースで進められていく検討会が、空疎に理想を語るのではなく、しっかり現状に基づいた障害児通所支援の再編などを行い、昨年の報告書にあるような役割を児童発達支援センターや地域自立支援協議会に求めるなら、その役割を実際遂行できる予算建てを、また一般施策への移行を促すなら学童クラブなどの全国的な制度整備を断行するなどを行わなければ、多くは机上の空論に終わるのではないかという疑念は消えません。