「僕らは奇跡でできている」

 今週、10月から放映されていた「僕らは奇跡でできている」というテレビドラマが最終回を迎えました。高橋一生演じる大学講師が主人公のこのドラマは、珠玉に満ちたいくつもの言葉があり、胸がすく思いがしました。
 例えば、タイトルにもなっている”僕らは奇跡でできている”。幼いとき養育に自信が持てなくなった戸田恵子演じる”山田さん”が、我が子(高橋演じる相川)に対し”見捨てた”ことを詫びますが、相川は、自分がこの世に生まれた偶然を奇跡と捉え、その奇跡をもたらしてくれた母に感謝する言葉を述べます。
 また、テストの点が取れない子どもの母に対して、あるいは外からの目と自分の現状とのギャップに悩む歯科医師に対して、相川は、点が取れない子どもの、そして歯科医師の「いいところを100個、自分は言えます」と言って、その人のいいところばかりを100個挙げていきます。歯科医師が自分の歯を治してくれる、という仕事のことのみならず、性格的なことやなんでもなさそうなこともポジティブにとらえてみていきます。これは、私たち福祉職では、その人のできないところを見るのではなく、強み(ストレングス)を見ていきましょう、という姿勢をとるのですが、それにもつながるものです。
 さらに、相川が行う授業の場面は、あまり詳しくは描かれていない印象を受けますが、ただ知識を伝えるいわゆる系統学習のようなものではなく、学生に問いを出し、その答えに成否を言うわけでもなく、元来学ぶことの楽しさを気付かせてくれる描き方がされています。教育史的に言えば、問題解決学習に連なるような授業を思わせました。ドラマでは、そこまで意識しているかどうかわかりませんが、現在の学校教育、特にその硬直化したカリキュラムに対するアンチテーゼのような趣きも窺えました。
 ドラマはもう終わってしまいましたが、機会があればまた観てみたいドラマでした。

                             森