「サービスの質」とは?
2006年の障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)の施行以降、3年に1回の報酬改定があることは以前に書きました。この報酬改定(ならびに法改正)が実施される前には、通過儀礼のきらいがありますが、パブリックコメント(広く国民から案に対する意見募集を行うこと)も行われます。今年度からの法改正、報酬改定にあたってもパブリックコメントが行われ、報酬改定については、今年の2月5日からの30日間(3月6日まで)意見募集が行われ、寄せられた意見は405件と公表されています。3月22日に、寄せられた意見の内容と、その意見に対する厚労省の考え方が発表されています。
その中の障害児通所支援の項目では、11点にまとめられ(実際の件数は類似した意見もあると想像されるためもっと多いと思います)、例えば、「通所支援は報酬単価が下がったが、専門職の必要性からみてもおかしいのでは?」という意見に対して「経営実態や処遇状況に基づいている」「児童発達支援センターや重症心身障害児を支援する事業所等については、引き上げなどの見直しを行った」などの見解が示されています。
いくつか気になる項目がありますが、今回ここで述べたいのは、以下のような意見とそれに対する厚労省の見解についてです。
意見としてまとめられているのは「放課後等デイサービスの基本報酬に区分を設定したことについて、サービスの質が低い事業所は淘汰されてしかるべきであるが、軽度の発達障害等の児童への支援について、質の高いサービスを行っている事業所がきちんと評価されるような制度設計を検討してほしい」というものがあります。それに対して厚労省は、「今回の改定については、行動に課題のある障害児等、より支援の必要性が高い障害児を多く受け入れる事業所を評価することとしております。今回の報酬改定がサービス提供体制に与える影響を分析した上で、サービスの質に関する調査研究を行うなど、サービスの質を報酬体系に反映させる手法等を検討してまいります。」との見解を出しています。
ここで気になるのが「サービスの質」と言う言葉とその意味するところです。まず、そもそも障害を持った人(子ども)への支援をサービスと言うことへの違和感が私にはあります。しかもサービスの質といったとき、あたかもSSTを行ったり、専門職の専門的アプローチ(例えばSTやOTによるリハビリ的アプローチ)を行わないと質が低い、とされてしまうのか、保育的な観点はどう評価されるのか、というようなことがとても気になるところです。
もちろん、ただテレビを見せたりゲームで遊ばせるだけで、保育的なアプローチも人(大人)がしっかり関わっていくこともしない、また支援の検証もしっかりなされない、という事であれば質が低いと評価されても致し方ないと思います。しかしその一方で、できないことをできるようにさせる、理解できていないことをわかるようにさせることが、デイで行うべきことだとなっていかないかという懸念も持ちます。そうではなく、今の子どものあるがままをまず認め、大人が寄り添う、一緒に遊ぶ一緒に活動するというスタンスが大事なのではないかと感じることが多々あります。大人が、今の子どもの状態を見て改善させなければ、という姿勢で、もっと言えばそのような枠組みで関わっていくことの妥当性と限界性があるのではないかと私は思っています。「サービスの質に関する調査研究」と言われるともっともらしく聞こえますが、子どもの思いや可能性とどこまで共振するものなのか、あるいはそうではないのか、その調査研究の姿勢や中身が今後、どう出てくるのか要注目です。
森